1.2 記述統計(きじゅつとうけい)と推測統計(すいそくとうけい)の比較
統計学は大きく分けて記述統計と推測統計の2つの分野に分類されます。この2つの分野は、データの分析と解釈においてそれぞれ異なる役割を果たしますが、どちらも重要な要素です。
記述統計
記述統計は、データを整理し、要約することに焦点を当てています。記述統計は、データセットの全体像を理解するために、データの分布、中心傾向、および散布度を視覚化する手法です。これには、平均値、中央値、最頻値(モード)などの代表値や、分散、標準偏差、範囲などの散布度を用いた統計量の計算が含まれます。
例:
- 売上データを分析し、月ごとの平均売上額を計算する。
- 顧客の年齢分布をヒストグラムで視覚化し、年齢層ごとの傾向を把握する。
記述統計の主な目的は、データをシンプルで理解しやすい形に要約し、データの特徴や傾向を明確にすることです。
推測統計
推測統計は、標本データから母集団全体について推測を行うことを目的としています。記述統計がデータセット内の情報の整理や要約を行うのに対して、推測統計は標本から得られたデータを基にして、母集団の特性を推定したり、仮説を検定する手法です。
推測統計では、信頼区間、仮説検定、回帰分析などの手法を使用し、標本データに基づいて母集団の平均や割合、相関関係などを推定します。また、これらの推定がどの程度信頼できるかを示すために、誤差や信頼度も計算されます。
例:
- ある商品の購入者の10%が特定の地域に集中しているという仮説を検定する。
- 新製品の市場シェアを推定するために、サンプルデータを使用して母集団の購入意向を推測する。
推測統計の主な目的は、標本データを基にして母集団についての一般化を行い、現実の問題に対して有用な結論を導き出すことです。
比較のまとめ
特徴 | 記述統計 | 推測統計 |
---|---|---|
目的 | データの要約と整理 | 標本から母集団を推定 |
データの対象 | 標本または母集団 | 標本データ |
主な手法 | 平均、中央値、分散、ヒストグラム | 信頼区間、仮説検定、回帰分析 |
利用シナリオ | データセットの全体像を理解 | サンプルデータから母集団の特性を推定 |
記述統計と推測統計は相互補完的なものであり、どちらもデータ分析において重要な役割を果たします。統計学を学ぶことで、これら2つのアプローチを適切に活用し、データに基づいた有益な結論を引き出すことが可能になります。
下田 昌平
株式会社レシートローラー代表 CTO、事業開発、数学、ソフトウェア開発を毎日コツコツ進めています。